企業がお金を借りるローンとして、ハイブリットローンと呼ばれる「劣後ローン」が存在します。
さまざまなローンがあるなか、劣後ローンはどのような特徴のあるローンなのでしょうか。
そこでここでは、劣後ローンの特徴について解説をしていきます。
劣後ローンとは?
劣後ローンとは、企業が万が一破綻してしまったときなどには、金融機関がその企業に債権回収を行います。
その債権回収の順番が、通常の融資よりも劣後するローンのことを指し、その仕組みからハイブリッドローンとも呼ばれています。
バランスシートで見たとき、負債と資本の間に位置し、優先株などと同様にメザニンと総称されます。
劣後ローンで資金調達を行うことは、資本の増強に近い性格を持っており、格付け機関の評価が高まる効果があります。
政府系金融機関などから劣後ローンをすることで、民間銀行視点での財務状況の健全性が高まり、通常の融資が受けやすくなるメリットもあります。
万が一、企業が破綻してしまったときの債権回収の順番が劣後するため、債務超過がきっかけで破綻してしまったときには、貸し手が資金を回収できないことも多いようです。
そのため、一般的な融資と比較して金融機関のリスクが高く、その分金利も高いという特徴があります。
新しく株式を発行せずに資本を増やすことができるため、株式の希薄化を避けるときなどに使われたりします。
資本性劣後ローン
劣後ローンは、資本性劣後ローンと呼ばれている側面があります。
そう呼ばれる理由について解説していきます。
前記で説明をした通り、会社が倒産したときに回収できる可能性がとても低いという点において、株式と性質がが似ていると言われています。
そのため、帳簿上では債務に分類されますが、金融機関では純資産(自己資本)の一部としてみなされます。
一般的には、借金をすると債務が増えてしまい、自己資本比率などの経営指標が悪くなり、追加融資が困難になります。
しかし、資本性劣後ローンとしてお金を借りていれば、そのお金は自己資本と見なされるため、自己資本比率は悪くなるどころか良くなります。
震災対応型資本性劣後ローン
つぎに震災対応型資本性劣後ローンについて解説していきます。
制度内容
この制度は、東日本大震災で被災した企業に向けて作られました。
これは、日本政策金融公庫が扱っている制度です。
制度内容は以下の通りです。
- 貸付限度額7億2千万円
- 貸付期間10年の元金一括償還
- 資本性劣後ローンとしての貸付
企業目線で見ると、10年間の期限はあるものの、自己資本が増えることになります。
表現を変えれば、議決権を必要としないまま増資を受けた状態と同じということです。
それにより、自己資本比率が向上し、民間金融機関からの借入にも期待が持てるようになります。
通常融資との違い
つぎに、通常融資と異なる点について解説していきます。
- 金利:金利は、融資が成功か失敗かによって異なります。現在は成功時3.60%、失敗時0.40%の金利になる。成功失敗の判定は1年毎に行われる
- 償還(返済):元金の返済は、10年後に一括。原則、期限前の返済は認められていない
- 特約締結義務:経営規律の維持を目的とした特約の締結が義務付けられている。
まとめ
企業にとっては、劣後ローンを受けることができれば、事業拡大の大きな力となります。
また、劣後ローンを受けられることにより、企業としての信用もあがり、さらに通常の金融機関から資金調達をすることもできます。
企業を運営している人で、融資を考えているのであれば、劣後ローンを候補に入れて検討して見ると良いでしょう。